2013年2月28日木曜日

スナフキンの手紙 Ⅰ

ある日、スナフキンが魚釣りからテントへ帰ると、
一通の手紙が中に置かれていた。
‘スナフキンへ’と書かれたその手紙には、
差出人の名前がなかった。

開けてみると中には一枚の白い紙があり、
「世界は美しい」と書かれていた。
不思議な手紙を持ったまま、
スナフキンはあたりを見回した。

ムーミン谷は秋の盛りを迎えており、
透き通った青い空には、
白いイワシ雲が漂っていた。
様々な落葉樹は、もみの木や杉の木を背景にして、
赤や黄色に燃え上がっていた。

「そうだ。世界は美しい」
そうスナフキンはつぶやいた。
「いや、まだこんなに美しいと言うべきだろうか」
おさびし山に沈む太陽を見つめながら、そう思った。

ジョン・レノンは奇妙な夢から目覚めた。
昔読んだムーミン谷の世界に、
たった独りでいる夢だった。

そこは真っ暗だった。
ただ一つの家の灯も見えなかった。
そして誰も居なかった。
かすかに見える木々は枯れ果てて、
まるで月面のように荒涼としていた。

暗くて、寒くて、淋しくて、
おまけに腹ぺこだった。
ジョンは恐ろしさのあまり、叫び声をあげた。
その声で彼は目覚めた。

*続く(原文1996年/2013年改訂)

2013年2月19日火曜日

スタジオキャット

引越から、早2ヶ月近く過ぎた。
この間、2度風邪を引き、偏頭痛が起き、
花粉症は現在、悪い状態のピークと思われる。

部屋に合わせて、新しい家具を幾つか揃えた。
照明器具が2つ、大きな本棚が1台。
ブックラックが1台、靴用棚と食堂の棚。
棚は全て組立家具。自分で組み立てた。

イームズの復刻デザインの赤い椅子。
作業用・食堂用兼用の机が1台。
貰った大きな学習机と椅子は大変重宝している。
ソファに合わせた、足載せスツールも買った。
収納用の箱も幾つか買った。

具合が良くない中でも片付けは細々と継続した。
2DKの狭い洋室をアトリエにするためだ。
齢、50歳をとうに超えて、
ダ・ヴィンチのライバルをうそぶきながら、
専用のアトリエを持ったことが無かった。
専用アトリエで制作することが、
ささやかなぼくの夢だった。

2月16日土曜日。
初めて、アトリエで絵具の絵を描いた。
制作途中でいちいち片付けなくてもいい。
描いた作品は次から次へと壁面へ貼り付けた。

あまりの心地よさに、
お祝いのバーボン水割りを拵えた。
スタジオキャットが誕生した。