2011年2月26日土曜日

二流の人

 10年ぶりに油絵具を使った。

 絵の指導では使っていたけれど、
 自作で使うのは、最後に風景画を描いて以来無かった。

 次回個展のための「プロントくん」シリーズの
 アクリル着彩作品がどうにも気に入らなかったからだ。
 
 自分の木製道具箱の中は黴だらけだった。
 絵の具は九割方使えなくなっていた。
 
 絵の具が固まっていたり
 チューブの金属が腐食してたりした。
 黄土色であるイエローオーカーのチューブは
 ボロボロと崩れ、中からは鮮やかな絵の具が現れた。

 ボードに和紙を貼り、アクリル絵の具で銀彩を施す。
 その上にアクリル絵の具でさらに彩色をした。
 色彩の強度と絵肌のマチエール(質感)が足りない。
 どうやっても足りない。
 今までは、重色を重ねれば、厚みと強度と変化が現れた。

 仕方なく油絵の具を使ったわけだ。
 樹脂と顔料、水を練って作るアクリル絵の具。
 扱いやすく、発色も良いのだが、乾燥後に絵の具が痩せる。
 つまり、水分が蒸発すると塗られた絵の具の容量が減る。

 油絵の具は酸化によって変化するだけで
 容量はほとんど変わらない。つまり痩せない。

 完成に至らない「プロントくん」の小品。
 油絵の具で加色したら、厚みが出て表情が変わった。
 うーーーん。油絵の具恐るべし。
 
 ピカソが紙に描いた水彩画にも
 油絵の具を何度か加色していた理由が少し分かった。
 遅いぞ、ひろし・・・・。

 80歳を迎えた、俳優で映画監督のクリント・イーストウッド。
 かっこいい。奥さんは35歳年下らしいが、
 彼ならば全然オッケーだろう。だってかっこいいんだもん。

 雑誌ビッグイシューのインタビューに応えてこう語っていた。
 「私が引退するとしたら、何か新しいことを試す気に
 なれなくなった時だろうね。
 新たなことに挑戦して
 それを成功させる機会がやってくると、
 いまだに血がたぎるんだ」

 一流の人は違うなあ・・・。

2011年2月23日水曜日

キャットくんの絵日記

 絵日記を書き続けている。
 
 これまでの人生で、
 日記を書き続けた経験はそんなにはない。
 絵日記は小学校の低学年以来だ。
 英文を添える形式は初めて。

 内容は大したものではない。
 小金井公園で梅の花を観た。
 百薬で呑んだ。
 朝ご飯に豚汁と納豆を食べた。などなど。

 このブログと大差はないが、
 人に見せるものでないのでより簡潔に書いている。
 絵はこんなにゆるゆるでいいのかと
 自分にツッコミを入れたくなる程雑な絵だ。
 でも新鮮でもある。

 もう一つの今年の目標。
 体重計を買う。体重計に載るはまだ達成していない。
 出来そうでなかなか出来ない。

 「一日一日を生きる」はどうか。
 どうなんだろうね。

 個展の前の年は月毎の予定表を立てる。
 今回はまだ立ててない。
 「洪水のあと」と「レクイエム」では出来たのに。
 
 個展会場のイメージがを描き、
 並べる作品の種類と数をおおよそ決める。
 小さな絵を何点、大きな作品、立体作品、版画と素描
 それぞれの完成目標を立てる。

 今回、苦労しているのは絵本とアニメだ。
 絵も手こずっているが、かなり点数が出来、
 方向性は定まってきた。でも核になる作品がないように思う。

 絵本はある程度固まって、完成作品を描き始める処。
 遅いな・・・・。アニメは白紙でやり直し。
 厳しいな・・・・・。

 キャットくんでは絵本だけで約1年間掛かりきりだった。
 絵本とアニメの両方は無理なのか。 いや、やろう。やるんだ、絶対!
 と絵日記には書いておこうっと・・・。

2011年2月18日金曜日

A Day In The Life

 新所沢へ向かう西武新宿線の電車に乗った。
 ビートルズセッションに参加するためだ。

 朝から午後1時まで仕事だった。
 マクドナルドでチーズバーガーを買い、
 コンビニで角瓶のハイボールを買った。

 電車に座るとハンバーガーを囓り、
 ハイボールを流し込んだ。
 旨い。人目が気になるが、
 お酒を抜いた次の日は染み入るように旨い。
 ハンバーガーはめったに食べない。
 ハイボールはほとんど飲んだことがない。
 意外にもこの組み合わせは悪くなかった。

 ライブスタジオネイブでは
 アルバム「サージェント・ペッパーズ」が流れていた。
 凄腕ギタリストのトーマさんに話かける。

 「トーマさん。
 通勤電車で酒なんか呑んでるヤツは
 やっぱクズみたいなもんだよな・・・」
 「よしいちゃん。
 オレなんか我慢できなくてホームで立ち呑みだよ・・」
 「やっぱり・・・」

 高校生の頃、陸上部の練習を終えると
 長岡駅午後5時57分発の信越線に乗った。

 まだ板張りでボックス型の車両では、
 何人もの酒呑みおっさん達がワンカップを呑んでいた。
 オレもあんなおっさんになるのかな。
 漠然と大人になった自分を想像していた。

 目の前では大森さんが
 'A Day In The Life'を歌っていた。

 目の前の赤ワインを飲み干すと
 次の自分の出番の準備のために
 フェンダーの白いエレキを持ち上げ、チューニングをした。

2011年2月13日日曜日

贅沢は素敵だ

 小さな贅沢。
 
 百薬で1,500円以上呑むこと。
 因みにお酒が5杯で1050円。
 ガツ醤油170円、カシラ・ナンコツ140円
 厚揚げ130円でも計1,490円だ。安い!

 ブックオフでCD、DVDを衝動買いすること。
 それでも年に数回あるかどうか。
 この前は桑田佳祐の「ひとり紅白歌合戦」を買った。
 藤山一郎の「青い山脈」からスピッツの「ロビンソン」まで
 幅広いレパートリーを堪能した。

 気に入った洋服を買うこと。
 洋服は予め欲しい物の値段とイメージがある。
 でもたいていは古着屋のキングダムかユニクロ。
 実家近く長岡のVOICEは最近のお気に入りだ。

 美術展をチケットセンターの割引券でなく行くこと。
 先日、「カンディンスキーと青騎士展」でそうした。
 会場の三菱一号館は明治の洋館建築でこれがいい。
 建築家は英国人のコンドル。旧岩崎邸も彼の設計。
 カンディンスキーは抽象画になる前が、
 一番優れていると思っていたが、
 今回の風景画を観て確信に変わった。

 あとは何だろうか。
 画材を買うのは商売だから仕方ない。
 趣味の音楽関係はエレキギターと
 アコースティックギターのリペアをしたいけどまだだ。

 この前、腕時計を修理した。
 電池が切れて、皮バンドが切れて2年が経っていた。
 レクソンという仏製の安物だが、文字盤が気に入っていた。
 やはり電池が切れて金属バンドが切れていた
 スウォッチも直したい。
 そうするとセイコーと併せて3つの腕時計になる。
 
 小さな贅沢。
 こう羅列してみると我ながらセコイなと思う。

 借金をしても贅沢をした谷崎潤一郎や川端康成。
 画家では岸田劉生。批評家の州之内徹。美食家魯山人。
 ぼくが芸術家として一流になれないのは、
 借金を出来る甲斐性がないからかも知れない。 

 無駄遣いは愚かしいが、
 贅沢は素敵だ。

2011年2月11日金曜日

雪の降る街を

 西友で半額で買った大根を下茹でする。
 玉子も茹でて、大鍋に出汁昆布と調味料を入れ、
 大根、薩摩揚げ、玉子を入れ煮込む。

 簡単おでんの出来上がり。

 東京に雪が積もった。
 今日は休暇だったので、知り合いの展覧会を見に西荻窪へ。
 東京で雪の日の散歩は悪くない。
 中央線からの雪景色も良かった。

 百薬で知り合った女性の美術家清水さんとしばし話し、
 作品を購入した望月通陽さんの新作展を見に鷹の台へ。
 大好きなラーメン屋東華園で肉野菜ラーメンを食し、
 松明堂ギャラリーへ入る。雪は激しく降り続く。

 本屋さんの一階から階段で地下室へ向かう。
 縦1mほど幅は40cmくらいだろうか。
 紺地に白抜で文字と絵で「いろはがるた」のイメージで
 古今東西の著名人の名言が作品に綴られていた。

 ローマ字の特徴のある独自の書体に人物を思わせる絵。
 これらが絶妙なバランスで配されている。
 観る度に良い作家だなーと感心させられる。

 雪は激しさを増し、あちこちが白くなっていった。
 昨日から良く歩いている。
 電車の中で睡魔に襲われる。
 子規の「仰臥漫録」を置いて目を閉じる。

 アパートに戻ってからもぼんやりする。
 何もする気が起きない。
 I氏が送ってくれた映画
 「ジョゼと虎と、魚たち」を観た。

 漸く重い腰を上げておでんに取りかかった。
 半額の大根は失敗だったかもしれない。

2011年2月10日木曜日

善悪の彼岸

 犯人捜しと流行への雪崩現象。
 この二つが気になっている。

 ついこの前までマスコミは
 小沢元民主党党首の強制起訴のニュース一色だった。
 今は大相撲の八百長ニュース一色だ。
 ちょっと前までは海老蔵一色だったのに。

 マスコミは犯人捜しに躍起になっている。 
 そして自分は告発者、つまり正義の味方を演じている。
 沖縄の基地問題も、尖閣諸島問題も何をどうすればいいのか
 それを真剣に論じたりしないように思われる。

 大切なのは「誰が悪いか」という犯人捜しなのだ。
 一つの犯人捜しが始まると、それは飽きるまで繰り返される。

 誰もが真相究明に熱意を持たない。
 問題点を洗い出し、解決方法を地道に求めたりはしない。
 まるで弁護人がいない裁判みたいだ。

 犯人さえ定めれば自分は正義で安全だと思っているようだ。

 ある新聞に回虫先生で有名な医学博士が書いていた。
 潔癖性が行き過ぎてアトピーや花粉症が増えたのではないかと。

 今の日本は善悪を簡単に分けすぎてはいないかと。
 善玉コレステロールと悪玉は簡単に分けていいのかと。
 体臭は個別性を示し、フェロモンを刺激するのに
 消臭に躍起になって、匂いを差別対象にしていないかと。
 
 我が意を得たり。そう思った。
 新聞でもテレビでも、
 ちょっと前のような識者の意見が見られなくなった。
 賛成意見と反対意見の併記が見られなくなった。
 善悪の色分けが単純で乱暴になってきたのだ。

 コメンテーターと称される人は、
 「空気を読み」犯人捜しに異を唱えることは少ない。
 
 超訳「ニーチェの言葉」マイケル・サンデルの「正義の話をしよう」
 の二冊が共に書店で売れているらしい。
 どちらも哲学を扱った内容である

 哲学の基本は「常識」を疑うことにある。
 日本が「善悪の彼岸」を超えて
 より成熟した思考の国民になるといいなと願う。 

2011年2月5日土曜日

春はあけぼの

 立春の昨日は暖かかった。
 天気図は冬型から春型へ変わったと言う。

 実家のある新潟を含む豪雪地帯に住む人たちは
 胸を撫で下ろしていることだろう。

 二、三日前から朝の富士山が霞んで見えなくなった。
 花粉飛翔が活発になって、目鼻の具合が良くない。
 紅梅・白梅・蝋梅をよく目にする。
 春の兆しははっきりと現れている。

 今年になって始めた英文入りの絵日記。
 何とか一ヶ月は描き続けた。
 
 最初は英文も短く、絵も略画だった。
 日を追う毎に英文は長くなる。
 絵も少し凝ったものに変わった。

 もっとシンプルにとは思う。
 仕事が始まると同じような日常の繰り返し。
 取り立てて書くような内容も無くなっていく。

 けれど、そのような全くの平凡な日常を描くこと。
 そこには意味というか何かの気づきがありそうだ。
 自分のこと自分の日常。
 何となく過ごしているので、
 無自覚に感じ考え、行動している。

 周りの人を見渡すと、
 ちょっと自覚すればもっと良い方向へ変われるのにと思う。
 そう言っても人ではなく自分を対象に研究し
 自分のことや自分の日常に気付くことは難しい。
 絵日記がその気づきのきっかけになるかもしれない。

 清少納言の「枕草子」が素晴らしいのは、
 ありふれた日常や自然の変化を
 「いとおかし」こととして観察していることだろう。

 「我々は我々に知られていない」ニーチェ

2011年2月2日水曜日

美術コレクション

 美術作品を買った。

 1月の半ば過ぎ。松明堂ギャラリーの展覧会でだ。
 作者は望月通陽氏。染色の作品。
 縦長の小品で赤茶の地に白く切り取られた人物と
 ラテン語らしき文字が並ぶ。
 銀色の額が良く似合う。
 ステンシル技法の型染めだろう。

 望月氏は光文社の古典新訳文庫で
 表紙絵も手がけておられる。

 手元にシェイクスピアの「十二夜」がある。
 ペンに依る線描のみで描かれた独特の人物。
 それは羽のある天使のようでもあり、
 長い衣を纏って円舞を踊る人のようでもある。

 PASSATOと名付けられた個展に原画が一点あった。
 パウル・クレーを思わせる細かいギザギザの線。
 描かれた人物のイメージは一目で望月さんと分かる。

 ガラス作家やブロンズ彫刻作家との共同作業の立体。
 唐津焼作家との焼き物の作品。
 お茶席に合いそうな非売の屏風も素敵だった。

 自慢じゃないが金は無い。
 住んでいるアパートも1DKだし古い。
 家財はほとんどがリサイクルショップで買った。
 2千円の洗濯機、炬燵にソファ食器棚も似たような値段。
 
 けれど購入した美術品は5点目。
 トルコの「ノアの箱船」の細密画。
 彫刻家青木野枝氏の銅版画。
 友人で美術家の野沢くんの立体。
 テディベア作家外間宏政氏のクマくんはまさきちと名付けた。

 どの作品も買うつもりで展覧会に行った訳でなく、
 お金もないのに欲しくなって買ってしまったものだ。
 
 買った作品を眺めながら、
 僕の作品を買ってくれた人の気持ちを思う。
 新しい作品もお金を出して買って貰うに値するか考える。
 
 ゴッホも手紙の中で自作の値段について語っている。
 だいたい3万円くらいの価値があると書いている。
 後の彼の成功を知る前に買った人はわずかしか居なかった。