2013年1月26日土曜日

孤独な神の仕事 (続き)

「さあてと。」
久しぶりの仕事に疲れた神は、
深い眠りに落ちた。

目が覚めて、
神がとりわけ思いを込めて創った
ある惑星を覗いてみた。

ある者は平和な暮らしをしていた。
ある者は自らの欲望を抑えきれずに、
戦争を始めていた。

ある者は自らを「神」と呼ばせていた。
ある者は神を畏れ、神殿を建てた。
ある者は預言者を名のり、
神自身が考えもしなかった、
崇高な言葉を人々に説いた。

ある者は淫行にふけり、
ある者は禁欲を自らに課した。
ある者は世界の理を語った。

そのうちに思いもよらぬ大洪水が起きた。
大地はその全てが水に覆われた。
地上のあらゆるものが、
死に絶えたように思われた。

その時、神はひとつの大きな船を見つけた。
(了)
*1989年原作/2012年改訂

2013年1月13日日曜日

孤独な神の仕事

時間の概念など存在しなかった遠い昔、
神はひとりぼっちだった。

神にはただひとりの話し相手もなく、
そして何をするでもなく、
ただ虚空を漂っていた。

ある時、神は自分が退屈していることに気づいた。
そして、神はかつて自ら創り出した世界の記憶を頼りに、
再び世界の創造に着手した。

神は身の回りにある
気体や固体をこねくり回しながら考えた。
「どうして前は間違えたのだろう?
それとも間違っていなかったのだろうか?」

そう呟いてから、
自分にはもともと善悪の観念など
持ち合わせていないことに気づいた。
「俺には特別な考えなどありはしないんだ」

神は特別意識した訳ではないのに、
かつて存在したものと寸分違わぬ星を、
植物や動物、そして人間を創り上げた。

(続く)
1989年原作/2012年改訂