2015年5月19日火曜日

大英博物館展 -コレクションの病-

2013年の大英博物館は入場者数の記録を作った。
その数は約670万人だというから、呆れる。
常時、15万点を超える展示がされていいて、
常設展は無料だという。

大英博物館は別名「泥棒博物館」「強盗博物館」
と呼ばれるらしい。
発掘調査の名で、世界各地の歴史的遺産を
持ち帰って展示している訳だから、
そう呼ばれるのも無理がないところでもある。

上野の東京都美術館で開かれている、大英博物館展。
ルーブル美術館展やエルミタージュ美術館展など、
過去に期待を裏切られた‘大’美術館展は少なくない。
だからぼくの期待も半分くらいだった。

最初のフロアでその予測は裏切られた。それも良い方に。
最初の展示が、古代エジプトの棺と現代アフリカの棺。
現代のものは黄色い豹のようなデザインで、
棺の下に四足があり、何ともユーモラス。

120万年前と言われる打製石器も、
展示の仕方や解説が巧みで興味をそそられえた。
年表や地図のデザインが良くて、
テーマが伝わってくる。

個人的に期待していた「ルイス島のチェス駒」
ナイジェリアの写実的彫刻「イフェの頭像」は
期待通りの素晴らしさだったが、
もっとも感銘を受けたのは、「ウルのスタンダード」と呼ばれる
古代メソポタミアのモザイク壁画だった。

象牙を削って造られたとおぼしき、
王を中心とした人々の群像。
人物の周りに配置された、
ラピスラズリ(天然のウルトラマリン=宝石)
の息も呑むような美しさ。
美のスタンダードとは何なのか、
考えさせられる素晴らしい作品だった。

ペルー「インカ文明の黄金のリャマ小像」
も秀逸だった。本当に小さいのだが、
黄金の放つ光のオーラのような、迫力のある造形だった。

「種の起源」を書いたチャールズ・ダーウィンが、
航海時に携帯していたという
「ビーグル号のクロノメーター(機械式時計)」
なども、近代史へのロマンを感じた。

期待を上回って嬉しいのだが、
本家の大英博物館を訪ねていないことを、
かなり悔しく感じる、そんな展覧会だった。

しかしコレクションは偏執狂的な病でもある。
それは個人の所有欲とともに、
世界を知り尽くしたい(≒世界を所有したい)
好奇心と向上心と独占欲の病なのだろう。

人はスナフキンにはなれない。
スナフキンは持ち去ることはせず、
ただ眺め、記憶することで満足する。

記憶が定かではない、また心もとない我々は
何かをコレクションせずにいられないのだろう。

2015年5月2日土曜日

天才の条件

天才とは何か。
ダ・ヴィンチのライバルを自称するよしいだが、
自身の至らなさを厭でも認識している。

「もし天才というものが存在するなら、私は天才です」
ジョン・レノンはインタビューにそう答えている。

天才の条件を考えてみた。
①自分を天才だという妄想を抱いている人
②好きなことに徹底的に努力出来る人
③新しい価値観を作る人
④技術や知識が専門家から大衆まで支持を得られる人
こんな処だろうか。
ジョンは確かにこの4つに当てはまる気がする。
世紀の凡才、よしい・レノンは
せいぜい①しか当てはまらない。

作曲家のヨハン・セバスチャン・バッハ、
数学者のアンリ・ポアンカレ、
日本では粘菌学者にして民俗学者の
南方熊楠が天才と呼べるだろう。

野球選手のイチロー。
彼の求道的な努力を考えると
努力を徹底的に出来る人は、
やはり天才だなと思うのである。

米国建築家のフランク・ロイド・ライト。
50代はスキャンダルにより不遇だったが、
自らを天才と公言していた。
日本での帝国ホテルの設計、
世界遺産のカウフマン邸、
通称「落水荘」の設計によって、
彼は建築家としての名声を得る。

日本が誇る浮世絵師の葛飾北斎。
彼の富嶽三十六景シリーズは、
70代で描かれたものと聞いた。
超遅咲きの天才だったわけである。

まだまだ勝負はこれからなのだ。