2013年2月28日木曜日

スナフキンの手紙 Ⅰ

ある日、スナフキンが魚釣りからテントへ帰ると、
一通の手紙が中に置かれていた。
‘スナフキンへ’と書かれたその手紙には、
差出人の名前がなかった。

開けてみると中には一枚の白い紙があり、
「世界は美しい」と書かれていた。
不思議な手紙を持ったまま、
スナフキンはあたりを見回した。

ムーミン谷は秋の盛りを迎えており、
透き通った青い空には、
白いイワシ雲が漂っていた。
様々な落葉樹は、もみの木や杉の木を背景にして、
赤や黄色に燃え上がっていた。

「そうだ。世界は美しい」
そうスナフキンはつぶやいた。
「いや、まだこんなに美しいと言うべきだろうか」
おさびし山に沈む太陽を見つめながら、そう思った。

ジョン・レノンは奇妙な夢から目覚めた。
昔読んだムーミン谷の世界に、
たった独りでいる夢だった。

そこは真っ暗だった。
ただ一つの家の灯も見えなかった。
そして誰も居なかった。
かすかに見える木々は枯れ果てて、
まるで月面のように荒涼としていた。

暗くて、寒くて、淋しくて、
おまけに腹ぺこだった。
ジョンは恐ろしさのあまり、叫び声をあげた。
その声で彼は目覚めた。

*続く(原文1996年/2013年改訂)

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