「クラゲ月」
「何、クラゲ月って?」
「あの月、クラゲに似ている」
3月上旬の昼下がり。
向かいの団地の上空に、
白いクラゲ月が出ていた、
クラゲ月は青い空の中をふわりふわり
気持ちよさそうに泳いでいた。
「あの月は(地球の反対側の)
ブラジルでも見えるのかな?」
と彼女は聞いた。
「さあ。月と太陽と地球の位置関係だな。
今度調べてみるよ・・・」
もちろん、調べてなどいない。
ただクラゲ月は良いなと、
次にクラゲ月を見るのはいつだろうかと考えた。
万葉の人も平安の人も、
メソポタミアやエジプト古王国のひとも、
きっとクラゲ月を見ていたのだろう。
あの月を見た、どれだけの人が
あれを「クラゲ月」と呼んだのだろうか。
春の昼の日差しとクラゲ月。
とても良い取り合わせだ。
宇宙空間を漂って、
地球にたどり着いた生命体。
ぼくらはそれらの末裔だ。
そして海から舞い上がったクラゲは
月になって、空を漂っている。
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