2014年4月6日日曜日

はるヲうるひと

春は恐ろしい。
気温差が大きく、老人がよく死ぬ。
自律神経がおかしくなる。

自殺者が多いのも春。
性犯罪が多いのも春。
前の彼女にふられたのも、
初恋の由美ちゃんにふられたのも春だ。

劇団ちからわざ第12回公演「はるヲうるひと」
素晴らしく、恐ろしい芝居である。
劇団主宰・作の佐藤二郎。
人間の持つ業、欲望や暴力性を露わにする。

友人の大高洋夫が演じる真柴哲雄。
はるヲうる娼婦たちの女衒として、暴力的に宿を支配する。
芝居は親子愛や兄弟愛、そして愛と欲望はどう違うのかを問う。
恐ろしく赤裸々に、情け容赦なく。

性を扱うのは難しい。でも我々は性を避けて生きられない。
それを、自分の性欲を、否定しようがしまいがである。

最近読み終えた米国作家のジョン・アーヴィングの小説、
「ひとりの体で」In  One  Person.
バイセクシャルである作家の自伝的小説らしい。
初めて恋したのが残虐なレスリング選手の男子。
次に恋したのが大柄で美しいトランスジェンダーの司書。
エイズの嵐と死に行く友人。家族たち。
下品な場面もエロスもさらりと描ききる。

エロス=生きる欲望(性欲も)タナトス=死への欲望(怖れ)
「はるヲうるひと」はエロスとタナトスを正面から描こうとしている。
芸術を創る人は「野蛮人」でないといけない。
芸術には狂気や毒が含まれているからだ。
しかも「繊細」でないといけない。世界を感じ取る力が必要だからだ。
この二つを併せ持つ、強靭な精神力を作り上げる努力が不可欠だ。

ヘボ絵描きの自分を奮い立たせてくれる、そんな芝居だった。

それにしても演出・堤泰之氏の大高評はよかった。
「大高洋夫は自ら焼いたパンを稽古場でみんなに振る舞うぐらい
よいパパなのに、殺し屋の目をしている」

羨ましい。
ぼくのライバル、ダヴィンチもピカソもゴーギャンも
殺し屋の目をしている。
ぼくの目は・・・・・。
残念ながら、優しい子羊の目なのだ。

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