2012年12月13日木曜日

怪物の誕生

その怪物がいつ生まれたのか。
正確には分からない。
およそ20万年前というが、
昔過ぎて見当もつかない。
その原型は700万年前だと言われても、
さらに見当もつかない。

怪物が地上に現れてた時、
それが大きな力を持っているとは思われなかった。
さほど大きい訳でも、力が強い訳でも、
走力、跳躍力、その他の身体能力が、
取り立てて他の生物を凌駕していた訳でもない。
つまり、怪物は怪物と認識されていなかった。

怪物自身も自分が怪物なのだとは、
今現在も気づいていないと思われる。
しかし、怪物は存在する。
怪物はこの地上を覆うように存在する。

怪物の特徴は二足歩行をすること。
「言葉」を使って、情報伝達が出来ること。
環境に適合できない、弱い身体を守るため、
衣が身体を覆っていることなどがある。

そしてさらに、頑強とは言えない身体を
他の生物よりも強固にするために、
道具を作り出したことが挙げられる。
怪物は今では、この星のあらゆるものを、
全て破壊できる道具さえ創り出したのだ。

怪物は他の生物を手名付け、
自らの家臣として従えるようになる。
そして、いにしえの王たちがそうであったように、
家臣の一部を家族のように扱ったりする。
家臣が王をどう思っているかを、気にもせずに。

それでも怪物は時に不安になる。
その手に余る道具を目にして。
もう他の生物の仲間にはなれない己を思って。
怪物として、王として君臨していると言う、
その妄想を時に自覚して。

怪物も多くは夜に眠る。
そして時には甘美な夢を見る。
そして再び目覚めた時に、
怪物は怪物になるのだ。

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