その怪物がいつ生まれたのか。
正確には分からない。
およそ20万年前というが、
昔過ぎて見当もつかない。
その原型は700万年前だと言われても、
さらに見当もつかない。
怪物が地上に現れてた時、
それが大きな力を持っているとは思われなかった。
さほど大きい訳でも、力が強い訳でも、
走力、跳躍力、その他の身体能力が、
取り立てて他の生物を凌駕していた訳でもない。
つまり、怪物は怪物と認識されていなかった。
怪物自身も自分が怪物なのだとは、
今現在も気づいていないと思われる。
しかし、怪物は存在する。
怪物はこの地上を覆うように存在する。
怪物の特徴は二足歩行をすること。
「言葉」を使って、情報伝達が出来ること。
環境に適合できない、弱い身体を守るため、
衣が身体を覆っていることなどがある。
そしてさらに、頑強とは言えない身体を
他の生物よりも強固にするために、
道具を作り出したことが挙げられる。
怪物は今では、この星のあらゆるものを、
全て破壊できる道具さえ創り出したのだ。
怪物は他の生物を手名付け、
自らの家臣として従えるようになる。
そして、いにしえの王たちがそうであったように、
家臣の一部を家族のように扱ったりする。
家臣が王をどう思っているかを、気にもせずに。
それでも怪物は時に不安になる。
その手に余る道具を目にして。
もう他の生物の仲間にはなれない己を思って。
怪物として、王として君臨していると言う、
その妄想を時に自覚して。
怪物も多くは夜に眠る。
そして時には甘美な夢を見る。
そして再び目覚めた時に、
怪物は怪物になるのだ。
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