2012年12月17日月曜日

終の棲家

かつて繰り返し、家の夢を見た。
現実には存在しない家や部屋の夢だ。

それらは時に懐かしいものもあったが、
多くは恐ろしいものだった。
それらの家に自分以外の人はおらず、
ぼくは恐怖を感じながら、
家の奥へ、奥へとやがて真っ暗な部屋へと
向かおうとするのだった。

あるものは恐ろしくはなく、
友人や家族が出てきたりした。
けれどどうにも奇妙な家や部屋が多かった。

それらの部屋や建物の一部は、
未だにぼくの心の何処かへ存在している。
ふいにそれらは頭の中をよぎったりする。
もはやそれらは恐ろしくも奇妙でもなく、
過去に存在した新潟の実家の記憶や、
親戚や友人の家の記憶と等しく、
自分の記憶の一部になっている。

かつて本当に在ったと思われることと、
夢の中や想像の中で存在したことの違いが、
ぼくの中で明瞭ではなくなってきている。

これを退化や老化、あるいは呆けの症状、
幻覚みたいな精神的な疾患の兆候と、
言えば言えるのかもしれない。

しかし、一方でやはり現実の世界は、
そもそもが危うく脆いもので、
それぞれの勝手な妄想から出来ているのだと、
強く思う今日この頃である。

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