2013年5月6日月曜日

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

ベストセラーになった村上春樹の書き下ろし小説。
「色彩を持たない多崎つくると、
彼の巡礼の年」を見て驚いた。

小説のタイトルとか内容とかではない。
表紙の絵が、米国のカラーフィールドペインティングの画家
モーリス・ルイスの作品だったからだ。

ぼくは学生の頃から、ルイスに憧れていて、
彼の分厚いカタログも持っていた。
カラーフィールドペインティング。
直訳すると「色彩の場の絵画」
大きく明快な色面を絵画の主題としている。
小説の絵画は、ルイスの晩年の
通称ストライプシリーズと言われている。

村上春樹の短編集「神の子どもたちはみな踊る」
その表紙には日本のシュールレアリスト
北脇昇の作品「空港」である。

日米のどちらかと言うと
やや地味な画家の作品の選択には感心した。
(ついでに言うと「1Q84」の文庫版の表紙。
奇想の画家ヒロイムス・ボスの代表作
「快楽の園」が使われていた)

ぼくは昔からの春樹ファンを自認している。
読んでないのは「アンダーグランド」くらいで
好きな作品は繰り返し読んでいる。
(一番好きなのは「羊をめぐる冒険」だ)

毎年、ノーベル賞選考の時期になると、
村上春樹が受賞するか話題になる。
ぼくは大好きな作家だから敢えて言う。
彼はノーベル賞を獲るような作家ではない。
獲る必要もないと思う。

春樹は好きな作家の一人に
米国の小説家、ジョン・アーヴィングを挙げている。
ぼくも好きで何冊か読んでいる。
彼はリアリスティックな文体で
大人のためのお伽噺を綴る。
翻訳で読んでもアーヴィングの方が、
村上春樹よりノーベル文学賞に相応しいと思う。

芥川賞を獲った作家はあまたいる。
まあ獲ることは大変なことだし、名誉なことだと思う。
けれど獲りたくて獲れなかった太宰治の経歴に、
芥川賞のキャリアは必要ない。

ノーベル文学賞は芥川賞とは比べものにならない。
もし獲ったら日本中の春樹ファンが、
ファンじゃない人も喜ぶだろう。

エンタテインメントでも純文学でもない。
そこが村上文学を魅力ではないだろうか。
だから村上春樹にとって、
そもそも賞は必要がないように思うのだ。

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