2014年10月13日月曜日

チューリッヒ美術館展

畳二枚分より大きな巨大な絵。

モネの晩年の連作「水連」だ。
池そのものと、水連の花と葉。
池に映る、木陰や、空。
そして、池の奥の水草が、
等身大で描かれている。
とても、70代の老人が描いた
作品には見えない。

夕暮れの時間だろう。
黄色とオレンジの光と、
紫色の影が強いコントラストを描く。

水連の左手には「積藁」シリーズの傑作、
右手もは「ロンドン」シリーズの佳作があった。

チューリッヒ美術館展は、
著名な作家の作品が部屋毎に纏められ、
ちょっとした個展のような展示が、
珍しく且つ良い空間を作っていた。
一作家でない場合は「シュールレアリズム」や
「ドイツ表現主義」「抽象絵画」みたいに、
テーマ別に配置されていた。

オスカー・ココシュカの作品も、
展示数、作品の大きさや質で、
満足できるものだった。
彼が恋人と別れた後、
しばし精神を病んでいたことを、
解説の文章で、初めて知った。

巨大な「モンタナの風景」は、
荒々しいタッチと、生々しい色彩で、
アルプスの町並みが蠢いていた。
大好きな浦上玉堂を思い起こした。

他にもセザンヌの傑作、モンドリアンの代表作、
バルラッハの素晴らしい木彫作品、
ホドラーの風景、パウル・クレーの色彩、
神秘的で魅惑的なキリコの「塔」の絵、
ムンク、ピカソ、ブラック、マチス、ルソーなど、
錚々たる名作揃いで驚かされた。

展覧会の最後の部屋が、画家兼彫刻家の
アルベルト・ジャコメッティの作品群だった。
スイス出身のジャコメッティだから、
チューリッヒ美術館展には相応しいわけだ。
数点のブロンズ彫刻と、
日本人哲学者「矢内原」を描いた油彩。

ぼくはジャコメッティの素描と油彩が好きで、
彫刻にはあまり惹かれなかった。
でも、「広場を横切る男」と題された、
ヒョロ長の人物彫刻には彼の意図を感じた。

出口の売店で迷った末、
10枚の絵葉書を購入した。
こんなに買うことはまずない。
もっと買っておけば良かったと
後悔したことは、記憶にない。

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