2014年10月8日水曜日

マーク・ロスコ -イメージと神話-

神話無き時代の神話。
芸術は、そんな現代の神話にたとえられる。

ヤコブ・バール=テシューヴァ著の
「マーク・ロスコ」を読んだ。
米国戦後の画家、ロスコの作品と生涯を
概説したものである。

「芸術を賞味することは、
心と心が結婚することなのだ」
そうロスコは語る。
「悲劇的体験こそは芸術の唯一の源」

宗教人類学者の中沢新一は
「神話こそ最古の哲学だ」と言う。
ロスコの絵画はまた、
神話的な体験を絵画の中に潜ませている。

曖昧で茫洋とした矩形が画面に漂う。
一見単純で捉えどころがない。
多くて三つほどの、彩色された矩形(横長の四角形)が
縦一列に背景の色彩の中に漂う。
時に鮮やかに時に沈んだ色調で。

色彩は見る人に心へ、
直接的に語りかける。
矩形もまた、強いイメージを形成する。
それらは、変化するように見えながら、
決して変わることのない世界のようだ。

真理の世界や神の世界が、普遍的なように、
ロスコの絵画も普遍性への憧憬が、
見て取れる。

変らないもの、彼岸に対する憧れが、
ロスコの絵画のイメージを
より強固なものしているのだろう。

生きているものは、絶えず変化する。
生れて成長し、やがて老いて朽ち果てる。
移りゆくものを捉える営み。
多様で雑多な此岸への憧れを、
ぼくはTokyo UFOやtokyo Dragonに描いた。

表現や表現の根底にある哲学が異なっても、
芸術はイメージと神話なしには生まれない。

イメージの持つ力はとても強く、
神話は解釈されても、説明され尽きることは無い。
ロスコの絵画の深淵さには、そんな秘密があるのだろう。

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