2011年3月20日日曜日

カッターナイフ

 カッターナイフで左手の人差し指を切った。
 人差し指の先端から真っ赤な血が流れた。

 油断したのだ。
 B2サイズのスチレンボードを裁断していて、
 ふと考え事をして、目を逸らしていた。
 「やってしまった」と思ったが後の祭。

 緑色のカッター台の上に、楕円形に切り取られた
 自分の指先の皮を見つけた。
 よほど、スパッと切り落としたのだろう。
 綺麗な楕円形には血の一滴も付いてなかった。

 直ぐに絆創膏を貼った。
 あっという間に血が溢れ出し、とても追いつかない。
 仕方なく、ガーゼの上にテープできつく巻いて止血した。
 漸く出血は収まったようにみえた。

 地震の時に7階屋上のプールから大量の水が溢れた。
 水はすぐ脇にあった階段を伝い流れ落ちた。
 まるで滝のように。
 階段から各階の廊下に流れ込んだ。
 エレベータにも流れ込んでいる。

 外での一般避難者の誘導を終えて戻った。
 二階の階段前で、 数人が水を階下に流れ落とす作業をしていた。
 大きなベニヤ板で作業していた女性に、
 「替わりましょう」と言った。

 指先に力を入れてベニヤ板を掴み、
 床に水平に水を押し出す。
 20分ほどの作業でほとんどの水は
 一階へ移動させることが出来た。
 左手の人差し指を見ると、
 ガーゼから血が滴り落ちていた。

 ほとんど徹夜での避難者への対応を終えて、
 乾パンが入っていた一斗缶をかたづける作業をした。
 缶切りでギザギザに切り取られた口の処で
 今度は右手の中指を二カ所切った。

 二日で指に三カ所も傷つけたのは
 初めてのことだった。

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