2011年7月18日月曜日

中心と周辺(近代主義について)

画家モーリス・ドニの有名な言葉。
「絵画とは人物とか風景、静物である前に、
一定の秩序で集められた絵の具の集合に過ぎない」

この言葉が新印象派(点描派)の産み出す
契機になったとも言われるし、
抽象画や20世紀アートに影響を及ぼしたとされる。

藤森氏の本でモダニズム建築は日本の伝統建築の
影響を経て、柱による自由な平面図を獲得できたとあった。

絵画はどうなのだろうか。
マネやモネ、ドガ、そしてゴッホにゴーギャン。
いずれも名だたる浮世絵コレクターであり、
その影響を自らの絵画に生かして人たちだ。

欧州の人たちは驚いた事だろう。
数色に見える限られた色に、はっきりとした輪郭。
色彩は極めて鮮やかに思われただろう。
そして無意識に気付いたのではないか。
絵画の本質は平面であること、
それを構成する究極の要素は線と色彩なのだと。
まさにドニの言葉と一致しないだろうか。

もう一つ言うと江戸時代の文化・化政年間は
世界史上初めての民衆文化を持った時代だった。

イタリア・ルネッサンスは、
一部の貴族と富裕層による文化だった。
古代ギリシャ・ローマは奴隷制の上での市民社会だった。
(それを差し引いても凄いことは凄いのだが)
17世紀オランダの市民文化も富裕層の為のものだった。

浮世絵の値段は掛け蕎麦一杯とほぼ同額だったと聞く。
滑稽本も庶民に親しまれた。(女性も読んだ)
歌舞伎や寄席など演芸文化も花開いた。
(日本の庶民文化はこの時の形態が現在まで続いている)

アンディ・ウオーホルのポップアートは
江戸浮世絵文化の変形に思えてくる。

もう一つ20世紀の美術を作った大きな力、
キュビスムはセザンヌの絵画とアフリカ彫刻の影響を受けた
ピカソと盟友ブラックによって始められた。

欧州のモダニズム文化は日本やアフリカなど
欧州から見れば周辺の影響で作られたと言ってもよい。
まあ、中心と周辺と言う概念も甚だしい勘違いなのだろうが、
近代主義の主流は欧州であったのに、
主流は傍流によって刺激を受け、活性化して
その姿を変えて行くのだろう。
(つづくかな)

0 件のコメント:

コメントを投稿