2011年8月21日日曜日

丙申堂(旧風間邸)

もう随分昔のことになる。
青梅市の小さな図書館に「日本の民家」全集があった。

大判の美術全集の趣。
現存する江戸期からの民家が
北は北海道から南は沖縄まで収集されていた。
全何巻だったのかは憶えていないが、
写真や図版を模写した。それらは今でも取ってある。

建築史家の藤森照信の本を読むまで、
近代建築の原点が日本建築にあるとは考えていなかった。
けれど大好きなモンドリアンの絵と
憧れの桂離宮の造形美には何らかの共通点があるなと感じてた。

日本の民家の障子の格子にも共通点を感じていた。
様々な民家にはそれぞれ独自の格子の様式があった。
それを酒田市の鐙屋や旧本間邸で実物を見ることができた。

二泊三日の最終日。
鶴岡に戻って丙申堂・旧風間邸を訪ねることにした。
風間は母親の旧姓である。何か繋がりがあるやも知れない。

本間邸ほど期待していなかったのだが、
邸内に入るなり保存状態の良さと格式に驚いた。
雰囲気というか、佇まいが何とも言えずに良いのだ。

聞けば、海運業や銀行を興した風間氏は越後の出身。
母親と同じ一族の可能性もあると、案内の人から聞いた。

廊下のように長く続く土間が石畳。
土壁も漆喰も梁も基本的に建築当時のままだというが
何処にも傷んだところが見当たらない。
よほど大切に保管維持され、修復されていることが分かる。

奥に進むと20畳はあろうかという板の間。
二階までの吹き抜けの梁には三角形のトランス構造になっている。
台所から繋がる後2階は住み込みの大工さんの部屋だという。

玄関へ戻って、前二階へ上がる。
石葺きの屋根と中庭が見える。何とも美しい。

戦災を免れた鶴岡や酒田には多くの文化財が残っていた。
加えて、豊かな自然と修験道など日本独自の宗教文化。
山形の旅は実りの多い旅だった。
(終)

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