2014年6月1日日曜日

夢見るテレーズ

瞳を閉じて、両手を頭上に組み合わせ、
左膝を立てて、スカートの中の下着を露わにするテレーズ。

思った以上に重厚感があり、
しっかりとした構成力を感じた。
それでいながら、堅苦しさは無い。
少女の上半身はしなやかで、
衣はあくまでも柔らかい。
色は渋みがありながら、
不用意に濁らせた処は何処にも見当たらない。

少女からはエロス(生きる力)を感じるが、
同時にタナトス(死へ向かう力)や、
生の危うさ、はかなさも感じる。

手前に描かれた皿をなめる猫や、
左手の椅子の脚は意図的に
描きかけのように表現されている。

絵画のリアリティには仕掛けが必要だ。
そして見たもの、感じたことに忠実でありながら、
そこから逸脱する意志が大切になる。、

エロスは移ろい行く生そのものであり、
タナトスは不変の死の世界を表す。
エロスとタナトスのせめぎあいは、
芸術の持つ「永遠への憧れ」と
常に変化して止まない「時代の精神」
という矛盾した主題と重なると思う。
 

バルテュスの絵画には、
そういった主題への挑戦が見て取れる。

時代の流行には背を向けて、
自らを「芸術家でなく職人」と呼んだバルテュス。
ピカソがバルテュスを
「20世紀最後の巨匠」と言ったのも
さもありなんと思わせる。
それほど力に溢れた作品群だった。

少女は画家のイメージの源泉であり、
バルテュス芸術の道警の象徴であったのだろう。

21世紀の東京でバルテュスと出会えて、
幸せなひとときを得た。

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