瞳を閉じて、両手を頭上に組み合わせ、
左膝を立てて、スカートの中の下着を露わにするテレーズ。
思った以上に重厚感があり、
しっかりとした構成力を感じた。
それでいながら、堅苦しさは無い。
少女の上半身はしなやかで、
衣はあくまでも柔らかい。
色は渋みがありながら、
不用意に濁らせた処は何処にも見当たらない。
少女からはエロス(生きる力)を感じるが、
同時にタナトス(死へ向かう力)や、
生の危うさ、はかなさも感じる。
手前に描かれた皿をなめる猫や、
左手の椅子の脚は意図的に
描きかけのように表現されている。
絵画のリアリティには仕掛けが必要だ。
そして見たもの、感じたことに忠実でありながら、
そこから逸脱する意志が大切になる。、
エロスは移ろい行く生そのものであり、
タナトスは不変の死の世界を表す。
エロスとタナトスのせめぎあいは、
芸術の持つ「永遠への憧れ」と
常に変化して止まない「時代の精神」
という矛盾した主題と重なると思う。
バルテュスの絵画には、
そういった主題への挑戦が見て取れる。
時代の流行には背を向けて、
自らを「芸術家でなく職人」と呼んだバルテュス。
ピカソがバルテュスを
「20世紀最後の巨匠」と言ったのも
さもありなんと思わせる。
それほど力に溢れた作品群だった。
少女は画家のイメージの源泉であり、
バルテュス芸術の道警の象徴であったのだろう。
21世紀の東京でバルテュスと出会えて、
幸せなひとときを得た。
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