もう少しで
眠れそうなのに
心臓が
ドクドク
打ち始めると
黒い人が現れる
瞳はほとんど閉じられて
頭の底は
夢の扉を開けようとしている
黒い人は
廊下に立ち
ふすまの蔭から
こちらをうかがう
黒い人は
闇の世界に住む
黒い人に
光はとどかない
黒い人に
音はとどかない
眠りに落ちるやいなや
黒い人は
私の上に襲いかかる
私は
心の中で
思い切り叫ぼうとする
黒い人は
真っ黒な顔で
虚無と一体となり
私は
虚無に取り込まれまいと
必死で
必死で目を覚まそうとする
黒い人は
気配だけを残して
私の頭の中と
目の前の廊下を
しばらく行き来する
眠りの神が
大きなハンマーで
頭の後をたたく
瞳を閉じる
ほんのわずかのすきまから
黒い人が
立っているのが見えた
いつからか
黒い人は
現れなくなった
彼は
私自身であったのだと
今ではそう思う
(制作年不明)
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