2010年6月18日金曜日

王様の話2(ヒンドゥー神話より)

 神々の王インドラが、あることから、
その神格から降格されて、
豚の身体にされてしまったことがあった。

 豚になった彼は、泥の中を元気にころげまわって暮らし、
成長し、つがいになる雌豚と出会って、
たくさんの子豚をもうけた。

 天の神たちは、
自分たちの王が
 いつまでもそのような姿でいるのを眺めているうちに、
とうとう我慢ができなくなって、
彼のところまで降りて来て、こう言った。

「あなたは我々の王様なのですよ。それなのに、
こんな所でこんなことをしているなんて」
 すると、豚は答えた。
「お前たちは、これのすばらしさも分からずに、
何を言っているんだ? 
お前たちこそ、これになってみろ。
そうすれば、そのすばらしさが分かる」

 その後、何を言っても相手にしないので、
ある日、強行策をとることに決めて、
彼の愛着の対象である子豚たちを殺してしまった。

 彼は嘆き悲しんで過ごした。
そしてその嘆きが治まると、妻である雌豚に
「さあ、また新しく子供を作ろう」と言った。

 これはまずいと思った神々は、
その雌豚も連れ去ってしまった。

 彼は呻吟し、深く嘆き悲しむ日々を過ごしたが、
やがて、別の雌豚に心を動かすようになっていった。

 どうしても駄目だと分かったので、
神々はついに彼の肉体を奪ってしまうしかないと考えた。
 剣が豚の心臓を貫くと、
その身体の中から、彼が出てきて言った。
「わたしが、これをすばらしいと言っていたって? 
まさか。さあ早く行こう」 

(2010年6月 I氏より送付される)

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