神々の王インドラが、あることから、
その神格から降格されて、
豚の身体にされてしまったことがあった。
豚になった彼は、泥の中を元気にころげまわって暮らし、
成長し、つがいになる雌豚と出会って、
たくさんの子豚をもうけた。
天の神たちは、
自分たちの王が
いつまでもそのような姿でいるのを眺めているうちに、
とうとう我慢ができなくなって、
彼のところまで降りて来て、こう言った。
「あなたは我々の王様なのですよ。それなのに、
こんな所でこんなことをしているなんて」
すると、豚は答えた。
「お前たちは、これのすばらしさも分からずに、
何を言っているんだ?
お前たちこそ、これになってみろ。
そうすれば、そのすばらしさが分かる」
その後、何を言っても相手にしないので、
ある日、強行策をとることに決めて、
彼の愛着の対象である子豚たちを殺してしまった。
彼は嘆き悲しんで過ごした。
そしてその嘆きが治まると、妻である雌豚に
「さあ、また新しく子供を作ろう」と言った。
これはまずいと思った神々は、
その雌豚も連れ去ってしまった。
彼は呻吟し、深く嘆き悲しむ日々を過ごしたが、
やがて、別の雌豚に心を動かすようになっていった。
どうしても駄目だと分かったので、
神々はついに彼の肉体を奪ってしまうしかないと考えた。
剣が豚の心臓を貫くと、
その身体の中から、彼が出てきて言った。
「わたしが、これをすばらしいと言っていたって?
まさか。さあ早く行こう」
(2010年6月 I氏より送付される)
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