水曜日の午前中のことだった。
舌のつけ根に違和感を感じた。
ジンジンと痺れるような感じ。
まだ痛いほどではなかったが、
夕方には話しをしただけで鈍い痛みが走った。
「口内炎だろうか・・」。舌に出来た経験はない。
とりあえずショコラBBを買った。
夕飯はさらにビタミンBを取ろうと、豚生姜焼き定食にした。
染みる。染みて痛い。考えてみれば当たり前だ。
生姜は傷に染みるはずだ。馬鹿じゃないか。
それでもビタミンBを取れば翌日には治っているだろう、
そんな気持ちでいた。
日頃から自分は口が立ちすぎると思い直した折だった。
針小棒大な言葉を吐き出している、悪い癖だ。
このブログでも毎回のようにそれが見え隠れする。
しかし反省が出来ない、いや、する気持ちがない。
「酷い口内炎ですね。4日くらい掛かりますよ」。
病院の医師にはそう告げられた。「塗り薬を出します」。
「飲み薬は無いんですか?」。「ありません」。
不安は現実になった。塗り薬を塗って暫くはいい。
しかし、お茶を飲んでも染みるのだ。
(お茶は染みると後でわかった。)
昼にサンドイッチを買った。傷口に張り付くように痛む。
バナナもダメ。意外に酸味もあると分かった。
染みると思った、うどんや雑炊の方が辛くない。
発症して明日で6日目。4日はとうに過ぎている。
「これは何かの試練なのだろうな」。
根拠などないが、そう考える。
試練と言うより体からのサインなのだ。
酒を抜いて内臓が綺麗になって、
おまけにお腹でも引っ込んだら、一石二鳥だななどと、
虫の良いことを考えたりする。
どちらにしても飲めないし、飲みたく無いから仕方ないけど。
死ぬ覚悟など、とうてい出来ないのだなと、
生にしがみついている自分を知っただけでも良かった。
突然、できものが全身に出来て、
絶望して「死にたい」などと言った主人公の女性が、
夫に励まされて行った皮膚科の治療を得て、
良くなったとたん幸福を感じる、
太宰治の「皮膚と心」を思い出した。
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