2010年6月6日日曜日

皮膚と心

 水曜日の午前中のことだった。
 舌のつけ根に違和感を感じた。

 ジンジンと痺れるような感じ。
 まだ痛いほどではなかったが、
 夕方には話しをしただけで鈍い痛みが走った。

 「口内炎だろうか・・」。舌に出来た経験はない。
 とりあえずショコラBBを買った。
 夕飯はさらにビタミンBを取ろうと、豚生姜焼き定食にした。

 染みる。染みて痛い。考えてみれば当たり前だ。
 生姜は傷に染みるはずだ。馬鹿じゃないか。
 それでもビタミンBを取れば翌日には治っているだろう、
 そんな気持ちでいた。
 
 日頃から自分は口が立ちすぎると思い直した折だった。
 針小棒大な言葉を吐き出している、悪い癖だ。
 このブログでも毎回のようにそれが見え隠れする。
 しかし反省が出来ない、いや、する気持ちがない。

 「酷い口内炎ですね。4日くらい掛かりますよ」。
 病院の医師にはそう告げられた。「塗り薬を出します」。
 「飲み薬は無いんですか?」。「ありません」。
 不安は現実になった。塗り薬を塗って暫くはいい。
 しかし、お茶を飲んでも染みるのだ。
 (お茶は染みると後でわかった。)

 昼にサンドイッチを買った。傷口に張り付くように痛む。
 バナナもダメ。意外に酸味もあると分かった。
 染みると思った、うどんや雑炊の方が辛くない。

 発症して明日で6日目。4日はとうに過ぎている。
 「これは何かの試練なのだろうな」。
 根拠などないが、そう考える。
 試練と言うより体からのサインなのだ。
 
 酒を抜いて内臓が綺麗になって、
 おまけにお腹でも引っ込んだら、一石二鳥だななどと、
 虫の良いことを考えたりする。
 どちらにしても飲めないし、飲みたく無いから仕方ないけど。

 死ぬ覚悟など、とうてい出来ないのだなと、
 生にしがみついている自分を知っただけでも良かった。

 突然、できものが全身に出来て、
 絶望して「死にたい」などと言った主人公の女性が、
 夫に励まされて行った皮膚科の治療を得て、
 良くなったとたん幸福を感じる、
 太宰治の「皮膚と心」を思い出した。

0 件のコメント:

コメントを投稿