文芸マンガ「坊ちゃんの時代」。
原作関川夏央、作画谷口ジロー。
10年も前に読んだ本が文庫本サイズになっていた。
図書館で借りて、敢えて第五巻の
「不機嫌亭漱石」から読み始めた。
晩年(とは言っても40代)の漱石が胃潰瘍を患い、
箱根に転地療養に訪れるのだが却って病状は悪化。
吐血した漱石は生死の境を彷徨う。
そんな場面が谷口の精緻な筆で描かれている。
第四巻は「明治流星雨」と題して
幸徳秋水の生涯と所謂「大逆事件」の様子が
これまた見てきたかのように描かれている。
「ココアのひと匙」はこの事件に際して
石川啄木が考えを吐露した詩のタイトルである。
「見てきたかのように」は揶揄ではない。
驚嘆しているのである。
他に石川啄木、森鴎外の巻もあり、
2回特集されている漱石を併せて全五巻となる。
文学者及び文学が主軸となっているが、
明治という時代を通して「日本の近代」とは何だったのか、
それを問うている。
「日本の近代」その評価と問題点を掘り下げてくれる
きっかけになっている。
歴史は一つの物語であるとも言える。
過去と言うのは結局私たち一人一人の脳の中にしか存在しない。
いやそこにも存在しているのかどうか。
それでも、そのような認識にたってなお、
「歴史」に学ぶことは重要だと考える。
僕たち自身が自分たちの「坊っちゃんの時代」を生きている、
そんな自覚を持ちたいと思うのだ。
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