2010年10月17日日曜日

ココアのひと匙

 文芸マンガ「坊ちゃんの時代」。
 原作関川夏央、作画谷口ジロー。

 10年も前に読んだ本が文庫本サイズになっていた。
 図書館で借りて、敢えて第五巻の
「不機嫌亭漱石」から読み始めた。

 晩年(とは言っても40代)の漱石が胃潰瘍を患い、
 箱根に転地療養に訪れるのだが却って病状は悪化。
 吐血した漱石は生死の境を彷徨う。
 そんな場面が谷口の精緻な筆で描かれている。

 第四巻は「明治流星雨」と題して
 幸徳秋水の生涯と所謂「大逆事件」の様子が
 これまた見てきたかのように描かれている。
 「ココアのひと匙」はこの事件に際して
 石川啄木が考えを吐露した詩のタイトルである。
 
 「見てきたかのように」は揶揄ではない。
 驚嘆しているのである。
 
 他に石川啄木、森鴎外の巻もあり、
 2回特集されている漱石を併せて全五巻となる。
 文学者及び文学が主軸となっているが、
 明治という時代を通して「日本の近代」とは何だったのか、
 それを問うている。

 「日本の近代」その評価と問題点を掘り下げてくれる
 きっかけになっている。

 歴史は一つの物語であるとも言える。
 過去と言うのは結局私たち一人一人の脳の中にしか存在しない。
 いやそこにも存在しているのかどうか。

 それでも、そのような認識にたってなお、
 「歴史」に学ぶことは重要だと考える。

 僕たち自身が自分たちの「坊っちゃんの時代」を生きている、
 そんな自覚を持ちたいと思うのだ。

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