2010年10月24日日曜日

死の勝利

 人は必ず死ぬ。

 全く眠らない人は居るらしいが
 食べること、排泄することで生を維持している。
 これら二つをしない(出来ない)状態でも呼吸はする。
 生きるとは息することだと、ある法話で聞いた。

 今日見た「NHK日曜美術館」。
 画家ブリューゲルの「名作十選」を特集していた。
 作家で大学教授の荻野アンナ氏が解説していた。

 そのブリューゲル解説の中で荻野氏が語っていたのが
 「人間は必ず死ぬ」「人間はみな愚かである」だった。

 ブリューゲルほど「人間の愚かさとその滑稽さ」、
 「生と死」を深く見つめた画家はいないかも知れない。
 少なくともルネッサンス期ではそれがあて嵌る。

 商業都市として栄え、市民階級が台頭していたフランドル。
 そこでは元々「日常をありのまま克明に描く」伝統があった。
 フランドルにおけるブリューゲルの先輩画家である
 ファン・アイク、メムリンク、ボスなどがそうである。
 その伝統はやがてフェルメールの絵画に結実する。

 イタリアルネッサンスの
 理想化され美化され演劇化した絵画世界とは明らかに異なる。
 基本的にイタリア半島では絵画・美術作品は
 教会や国王、国の権威などのプロバガンダであった。
 そこでは「死」も理想化される。

 「死の勝利」はブリューゲル初期の傑作である。
 死の馬に導かれて、夥しい数の骸骨の大軍が人々に襲いかかる。
 そこでは武力も財力も、あらゆることが無力である。
 ボスの影響が伺われ、陰惨な光景が幻想的に美しく描かれている。

 まるでシェイクスピアの「マクベス」の一節のようだ。
 「綺麗は穢ない(きたない)。穢ないは綺麗」。

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