2010年10月21日木曜日

この空を飛べたら

 通勤途中でカラスに遭遇しない日はまず無い。
 朝の新宿の裏通りは飲食店の出す生ゴミがあるからだ。

 時にはカラスと目が遭う。
 カラスの目を見つめると、
 カラスもこちらを一瞥し飛び去って行く。

 テレビでカラスの知能は人間の4歳に匹敵するらしいと。
 それはチンパンジーを上回るかも知れないと言っていた。

 大学時代に読んだ本、数学者矢野健太郎著の「数学物語」。
 数学コンプレックスだった自分を克服したいと読んだ。
 最初にカラスは幾つまで数えられるかと書いてあった。

 ある実験によればカラスは4までの数を理解してるらしい。
 またテレビではカラスには感情表現の機能があり、
 これは人間以外の動物では類人猿でも有していないと、
 そう報じられていた。

 これには疑問だった。
 荘子の「知魚楽」でも「魚が楽しそうに泳いでいる」は
 実際には解らなくても主観として感じることであり、
 事実そう感じられるとあった。
 そういうことではないか。

 カラスに限らず鳥たちが空を飛び、
 辺りを睥睨する時、彼らはどんな思いでいるのか。
 無論、真剣に食物を物色しているだろうし、
 天敵に対する警戒も怠らないだろう。

 けれど僕は夢想するのだ。
 自分が鳥ならば世界は鳥の世界なのだと。
 人間がこの星の主体であるかのように勘違いしているように
 鳥たちもたぶん自分たちが
 この星の支配者だと思っているのではないか。
 
 これはノラ猫や鼠、昆虫でも同じではないか。
 木々や草花でさえそう思って存在しているのではないか。

 かつてこの星には恐竜たちが闊歩していた。
 それは1億5千万年の長きに渡る。
 この星で生態系の頂点に立つものは
 ことごとく絶滅している。

 けれどティラノザウルスのある種が進化して
 現在の鳥になったらしい。
 
 巨大な怪物が小さく変身することで
 種を生きながらえさせたのだ。

 ぼくもいつの日か進化して小さくなり、
 有翼となって飛翔するのだ。
 その時の空からの光景を見つめて生きているのだ。

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