通勤途中でカラスに遭遇しない日はまず無い。
朝の新宿の裏通りは飲食店の出す生ゴミがあるからだ。
時にはカラスと目が遭う。
カラスの目を見つめると、
カラスもこちらを一瞥し飛び去って行く。
テレビでカラスの知能は人間の4歳に匹敵するらしいと。
それはチンパンジーを上回るかも知れないと言っていた。
大学時代に読んだ本、数学者矢野健太郎著の「数学物語」。
数学コンプレックスだった自分を克服したいと読んだ。
最初にカラスは幾つまで数えられるかと書いてあった。
ある実験によればカラスは4までの数を理解してるらしい。
またテレビではカラスには感情表現の機能があり、
これは人間以外の動物では類人猿でも有していないと、
そう報じられていた。
これには疑問だった。
荘子の「知魚楽」でも「魚が楽しそうに泳いでいる」は
実際には解らなくても主観として感じることであり、
事実そう感じられるとあった。
そういうことではないか。
カラスに限らず鳥たちが空を飛び、
辺りを睥睨する時、彼らはどんな思いでいるのか。
無論、真剣に食物を物色しているだろうし、
天敵に対する警戒も怠らないだろう。
けれど僕は夢想するのだ。
自分が鳥ならば世界は鳥の世界なのだと。
人間がこの星の主体であるかのように勘違いしているように
鳥たちもたぶん自分たちが
この星の支配者だと思っているのではないか。
これはノラ猫や鼠、昆虫でも同じではないか。
木々や草花でさえそう思って存在しているのではないか。
かつてこの星には恐竜たちが闊歩していた。
それは1億5千万年の長きに渡る。
この星で生態系の頂点に立つものは
ことごとく絶滅している。
けれどティラノザウルスのある種が進化して
現在の鳥になったらしい。
巨大な怪物が小さく変身することで
種を生きながらえさせたのだ。
ぼくもいつの日か進化して小さくなり、
有翼となって飛翔するのだ。
その時の空からの光景を見つめて生きているのだ。
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