2010年11月21日日曜日

一瞬を描く

 葛飾北斎の富嶽三十六景から「神奈川沖裏」。
 遠くに富士を臨み、画面全体を大きな波が揺れる。
 
 安藤広重の東海道五十三次から「四日市」。
 強風に揺れる柳の木を中心に、
 手前に向かって転がる笠を追いかける旅人。

 いずれの場面も
 当時出来たばかりの写真技術では捉えられない、
 ある場面の一瞬を描いている。
 それらは映画の一場面のようでもある。

 「今を表現すること」。
 「近代の絵画」について
 詩人のボードレールはそう語ったらしい。
 何を当たり前のことをと思う人は多いと思う。

 しかし当時のサロンでは宗教画や歴史画が主流だった。
 だから、当時の都市や田舎の風景、風俗や肖像や静物など
 印象派の画家たちが好んだ主題は、
 サロン(官製展覧会)においては劣る画題とされたのだった。

 そんな印象派の画家達が浮世絵をみて意を強くしたことだろう。
 実際に彼らの多くは熱心な浮世絵コレクターだった。
 マネ、モネ、ドガ、ゴッホ、ゴーギャンら
 浮世絵の構図や色彩表現、線と色面の効果などを学んだ。

 毎日の通勤で見かける光景。
 同じ瞬間は二度と来ないと、そう思う。

 「同じ川に二度と入れない」といった
 古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの気持ちが
 歳を重ねる毎に分かる気がしてきた。

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