昔見た夢を童話風の物語にしてみようと思った。
10年くらい前のことだ。
構想を練りタイトルをつけてそのままにしてある。
作品化の計画は今のところない。
漱石の「夢十夜」みたいにしたかった。
昔見た悪夢の幾つかは、
今でもありありとその映像が浮かぶ。
夜のスキー場の夢。
大きな山のゲレンデを一人滑っている。
ナイター照明が煌々と輝いている。
ところが振り返ると照明は消え、
底知れぬ闇が広がっている。
あせって、スキーを走らせる。
滑るスピードを追いかけるように、
一つ一つ照明は消えていく。
顔のある月の夢。
尖った山の外側の道を歩いている。
道の下は峻厳な崖になっている。
山道を一人登っている。
真っ暗な空にオレンジ色の月が現れる。
バスケットボールより大きい月には、
苦しそうな大人の男の顔があった。
ギョロッとした目でこちらを睨んでいる。
子どもの頃から世界にたった一人で、
存在しているイメージがある。
保育園の時、祖母と祖父と寝ていた。
姉は両親と寝ていたのだろうか。
一緒だった気もする。
みんなが寝てしまって、一人起きていると、
自分の肉体が宇宙に放り出されて、
星々の合間に漂ってしまった気がした。
僕は布団ごと宇宙空間に投げ出されていたのだ。
月曜日に敬愛する先生と話す機会を持った。
ヴィトゲンシュタインから、吉本隆明の話になり、
やがて宮沢賢治の話になった。
「よだかの星」を思い出して、
先生と話している内に泣きそうになった。
最後の場面、よだかが星になろうとして、
東西南北全ての星々に頼むが断られる。
力尽きて、よだかが堕ちていく彼の場面だ。
おぼろげだが、宮沢賢治が童話において為し得たことを、
自分の絵画の領域で出来ないだろうかと妄想した。
「よだかの星はいつまでもいつまでも燃え続けました。
いまでも燃えています。」
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