2010年8月4日水曜日

女の過程

 「女っていうのは一番が感情で二番に言葉で
 三番に理性なのだろうと、自分の悪癖をまた性に転嫁する」。
 金原ひとみ小説「TRIP TRAP/女の過程」より。

 金原ひとみの本を読むのは「蛇とピアス」以来だった。
 ストレートな語り口が凄いと感心していたが、
 2作目を読むことに二の足を踏んでいた。

 一番に感情では、男は女に叶わない訳だ。
 愚かな男は、感情と同時に体裁を考える。
 つまり本音をオブラートに包もうとする。
 そういうええカッコしいが男なのだろう。
 
 小説家姫野カオルコも女性の持ついやらしさに対して辛辣だ。
 姫野の小説、「レンタル(愛人)」の中で主人公の女性は
 同じ女性に対してこんな疑問を呈する。

 「結局、身体が目的だったのね」と男性に迫る女友達に
 それは自分の身体が目的になるほど素晴らしいことを 
 自慢しているに過ぎないと言ってのけるのだ。
 実は凄く自信過剰なんじゃないかと。

 テレビバラエティ番組でマツコデラックスが
 TBSのアナウンサーの悩みに答えるコーナーを見た。
 驚いたのは女子アナの一人がこう言ったことだった。

 「私は職場の飲み会でもすぐ気を利かせて
 みんなのお酒を用意したり、すごく気を遣ってしまう」。
 これは自慢ではなくて、悩みだと言うのだ。

 マツコの答えが良かった。
 「あんたはいいわよ。今だって計算出来ているんじゃない。
 自分がどう見られているか。大丈夫よ」。そう揶揄した。
 けれど女子アナがタレントのような役割を
 せえざろう得ない状況には同情していた。

 女の過程を読んで、女性は人生のそれぞれの段階で
 進化というか成長を余儀なくされているのかも知れない
 そう思った。
 
 男は進化や成長でなく、
 経験から学習することしかできないように思う。
 自分だけかもしれないが。

 女性が女性の狡さを露呈する小説を読んだことはあるが、
 男性が男性の愚かさを指弾する小説はあるのだろうか。
 たぶん在るのかも知れないが、僕はよく知らない。
 チャールズ・ブコウスキーの小説「女たち」が唯一それに近い。
 
 「人は結局、
 世界の不条理や自身の無力感に耐えうる力を持っているのだ」。
 金原ひとみ「TRIP TRAP/夏旅」より。

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