2010年8月1日日曜日

人生はおとぎ話だ

 Keep passing,open the window.
 「開いている窓の前は通り過ぎること」。

 「ガープの世界」に続いてジョン・アーヴィングの小説
 「ホテルニューハンプシャー」を読み終えた。
 見事な小説だった。友人の文士の言は正しかった。

 主人公の父親が 
 一家でホテル経営を始めるが上手くいかない。
 射殺されてしまう飼い熊のステートオブメイン。
 同性愛の長男、近親相姦の長女と次男。
 飛行機事故で亡くなる妻と三男。 
 小人症の次女。次女の自伝小説はベストセラーになる。
 オナラばかりする飼い犬のソロー。 
 悲運(sorrow)は漂う。どんな家庭にも必ずある。
 それでも人生は進んでいく。
 
 仏陀の話を思い出した。
 幼子を亡くした母親が仏陀の処へ来る。
 「どうか我が子を甦らせて欲しい」と。
 仏陀はこう答える。
 「一度も死人を出したことの無い家を探して
 麦粒を貰って来なさい。そうすればお子さんは生き返ります」と。

 母親は必死になって、家々を訪ねる。
 しかし死人を出したことの無い家は見つからない。
 母親は死が必然であることを悟り、
 仏陀の弟子になったという。

 アーヴィングの小説は仏教に通じる
 諦念のようなものを感じる。
 死も悲運も避けられないものだと。
 「人生はおとぎ話だ」と書く作家には
 おとぎ話には試練が多いことが分かっているのだ。

 だいぶ前に観た映画もビデオで借りて見直した。
 以前観た時は途中で寝てしまった記憶がある。
 映画も良く出来てはいた。
 「ガープの世界」とは比ぶべくもないが。

 ガープの世界は良い意味で原作をアレンジしてた。
 原作にない部分の挿入や、脚色が効果的だった。
 ホテルニューハンプシャーは原作に忠実過ぎた。
 小説と映画は別物だから、
 映画としての表現を追求した方が面白いに決まっている。

 「開いている窓の前は通り過ぎること」。
 死が避けられない運命であるならば、
 開いている窓から落ちようとする必要はない。
 窓の外が明るくても、暗くても
 それは大した問題ではないのだ。

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