2010年12月1日水曜日

白い灯台

 坂道を歩いていた。

 左手は海。
 砂浜ではなく崖になっている。
 さほど険しくはないが、波が岩に砕けている。
 
 空は抜けるように青く、
 白い雲がふわりと浮かんでいた。
 
 坂道を登り切った処には、白い灯台がある。
 灯台を目指して歩いていた筈だが、
 右手に見える花園に目を奪われている内に見えなくなった。

 ここは何処なのか、にわかには解らない。
 季節は夏で、どうやら北の島らしい。
 樺太だろうか・・・。
 
 そんなことを思案しながら、さらに先を行く。
 まばらに木造平屋建ての建物が見える。
 いずれも、北の地に相応しい造りだ。

 一人きりだが寂しくはない。
 誰かに出会う予感もない。
 ただしんとした心持ちで歩いている。
 不安も畏れもない、不思議な心持ち。

 振り返ると、
 さっき見えなくなった
 白い灯台が見えた。

 *夢シリーズ第3話

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