2010年5月6日木曜日

北方記念博物館

 宮大工だったご先祖様は代々「伝八」を名乗った。
 田舎では珍しくない「屋号」と呼ばれるものだ。

 父が宮大工だったご先祖様のことで自慢しているのが
 県内に建てられた数々の寺社・仏閣、
 ご先祖様が作った実家の大きな仏壇、
 そして五代前の伝八の弟子達が
 亡くなった伝八のために建ててくれた実家のお墓である。

 新潟県の観光名所に「北方記念博物館」がある。
 数年前に友人の加藤氏、川畑氏と尋ねた。
 その前に見たのは20年以上も前だ。

 広大な敷地に贅を尽くした大きな庭。
 当時の栄華が偲ばれる巨大でがっしりとした屋敷。
 素晴らしい欄間や床の間。螺鈿細工の見事な調度品。
 かつての土蔵の倉には美術品、日用品、農具などが
 ところ狭しと展示されている。

 そこにある別棟の奇妙な三角形の茶室。
 建築の平面が三角形でユニークなのだが、
 最近になってこれを建てたのは
 先祖である伝八だと言う記事を文献の中に父が見つけた。

 伝八が棟梁として建てたと聞いた
 寺社・建築はこれで三つ見たことになった。
 まだ県内に2つ以上は残っていると聞いている。

 実家に向かう新幹線の中で
 トランヴェールと言う無料の雑誌を手にした。
 作家の伊集院静がエッセイを連載している。

 その中に日本の自然の多様さが書かれていた。
 ヨーロッパの自然と比較してである。
 自然は勿論だが、文化も多様だと思った。
 
 一神教であるキリスト教は、
 宗教的な圧力が仏教や、神道に比べて強いように感じる。
 キリスト教が背景として成立した近代主義、
 近代社会も同様に単一な価値への強制力が強い。

 昔読んだ哲学者の梅原猛の著作に、
 教会と寺社・仏閣の比較が書かれていたと記憶する。
 それは南方熊楠の引用だったかも知れない。

 曰く、寺社・仏閣は周囲に木を植え、大きく育てたが、
 ゴシックの教会は内部空間に、
 木の代わりの巨大な柱を構築したのだと。

 木や巨大な柱は、
 天と地を繋げる梯子の役割を持っているらしい。

 僕も日本の自然と文化は、
 多様性に素晴らしさがあると考える。
 そして父や親戚の方々と同様に、
 日本の文化を象徴する建築に携わった
 ご先祖伝八を誇りに思っている。  

0 件のコメント:

コメントを投稿