ピカソやダ・ヴィンチをライバルとうそぶく。
そんな僕だが、セザンヌをライバルと呼ぶ気はない。
とても敵わないからだ。
セザンヌは、僕の大好きなマチスやピカソ、
彼らが偉大だという唯一無二の存在だ。
セザンヌとは全く違った絵を描いた同時代のモネ。
彼もセザンヌの偉大さに気付いていた。
セザンヌは絵を描く対象、人物や静物、風景を
異なる複数の視点で描く試みをほとんど独自に始めた。
簡単に言えば、人の顔を正面と横顔をそれぞれに見て
それを一つの画面に再構成する「福笑い」だと思えばいい。
これを徹底的に推し進めたのがピカソのキュビズムである。
最近の研究で分かったのだが、
レオナルドの「モナリザ」も顔の右半分と左半分を
僅かに異なる角度で眺めて、一つの顔にしたらしい。
さすがに我がライバルだと感心した。
パリの個展が大評判で、巨匠の地位を晩年に得たセザンヌ。
彼は成功にも浮かれることなくひたすら描くことに没頭したという。
セザンヌはインタビューに答えてこう語っている。
「幸福とは美しい公式を見つけること」だと。
彼の代表作である「サント・ヴィクトワール山」シリーズ。
打ち震える細い線と、平筆の筆触を利用した四角い形の断面。
色彩は固有色を参考にしながら、そこから離れ
色と色の関係や、調和が重視される。
線と形と色があるいは一体となり、
あるいは対立するかに見え、画面の中にドラマが生まれる。
彼の絵画は対象を描写しながら、
美しい公式に依って新たな世界を創造することに、
彼の全精力が注がれていたのだろう。
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