春はわさわさする。
春はそわそわする。
そして、春はぼわあーーとする。
でも春は慌ただしく、駆け足で過ぎ去ろうとする。
春の尻尾を捕まえようと
あちこちキョロキョロしている内に
春はあちら側へ向かってしまう。
花粉症が辛い。
今年は当たり年だ。
ウキウキの春がどんよりの春に変わってしまう。
それでも今年の桜は美しかった。
去年より、今までより白く可憐に見えた。
桜が終わって、新緑の季節。
一年中で一番の季節だと思う。
日本の新緑は世界一だと、
何の根拠もなく思ってしまう。
本当は世界一でも世界100位でも構わない。
目の前に現れた、新しい生命の息吹。
まるで奇跡のように思われる。
「緑あれ!」と誰かが叫んで、
一斉に現れたような、そんな気さえする。
「一日の憂いは一日にて足れり」
山頭火の日記にあった。
キリストの言葉らしい。良い言葉だ。
新緑の魔法は長くは続かない。
一週間か10日もすれば、
あの淡く繊細は若葉色は、重く強い緑に変わる。
非日常が日常に変わる。
春の祭典は終わり、初夏を迎える。
それでいいのである。
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