2010年7月20日火曜日

1990

 「何故だろう?」。
 「もう少し大人になればわかるさ」。

 彼は空想の死を希望していた。
 つまり死にたい時に死に
 そして何度も復活したいと望んだのだ。
 それはおそらく生があまりにも重すぎた故でもなく
 生を実体あるものとしてとらえる能力に
 欠けていたためと思われる。
 実際彼はその人生のほとんどを
 幻想の中で費やしたと言ってもいい位だった。
 ただ本人にはどこまでが現実で
 どこまでが幻想なのか 
 はっきり区別をすることが難しかった。

 現実の中で「これは長い夢を見ているのだ」
 と感じることが度々だった。

 彼は時に異教の神に祈った。

 神々の中で彼に応える者は居なかった。

 (1990年制作)

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