2010年7月29日木曜日

Over The Rainbow

 目が覚めたら雨の音がした。
 外は明るく雨模様ではない。

 カーテンを開けて空を見上げた。
 ぼんやりと虹が架かっていた。
 
 久しぶりの虹を眺めながら、
 以前のI氏のメールを思い出した。
 このブログにも掲載した「音楽について」である。

 目の前で演奏された音楽は、
 確かにそこに在ったと思われるし、
 断片的に思い出すことも出来るのだが、
 もうそこには存在しない。永遠に。

 目の前の虹は、そもそも存在しているのだろうか。
 見えている間は在るとも言えるのだが、
 光の反射に過ぎない虹は手に触れることも出来ない。
 まるで幻のような存在だ。

 しかし我々の目に映る全てのものは、
 やはり光の反射に過ぎないではないか。
 確かに手に触れたり、匂いを嗅いだり、
 食べ物なら口に入れて舌触りを確かめて味わうことだって可能だ。

 数年前に見たエリック・クラプトンのコンサート。
 満員の武道館でのアンコール曲。
 イントロを聴いても、何の曲か分からない。
 クラプトンの歌が始まる。'Over The Rainbow'だった。
 「いつの日か、虹を越えて。空は青い・・・」。
 美しく切ない、大人のための童謡のように感じた。

 実体がまだ存在していようがいまいが、
 過去に起きたことのみならず、目の前の世界も
 頭が創り出した物語に過ぎないのではないか。
 私たち自身が幻のような存在ではないか。

 それでも私たちは夢見ることを止めたりはしない。

 Rain(雨の)Bow(弓)。
 半弧を描く朝の虹を眺めながら
 そんなことを考えた。 

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