2010年2月15日月曜日

月と6ペンス

 昨日見た、日曜美術館。
 「魯山人」を特集していた。

 北大路魯山人は、今や漫画「美味しんぼ」の
 海原雄山のモデルとして知られているのかも知れない。
 書家、篆刻家にして、陶芸家。画家としても知られる。
 そして日本料理を今の形に創り上げた美食家の一人だ。

 傲岸不遜で口が悪く、敵が多かった。
 あまり近づきたくないタイプの人間に思える。
 陶芸家を名乗りながら、轆轤などは職人に轢かせ、
 自らは削りなどの仕上げや、絵付けのみを行った場合も多く、
 職人的な陶芸家でなく、プロデューサー的だったとも言われる。

 それでも魯山人の陶芸は、
 一目で魯山人だと感じさせる造形力がある。
 またどんな陶芸家にも真似できない自在さと、
 趣味の高さ、気品がある。

 魯山人について著書があり、番組に出演していた
 林屋晴三氏はこう語った。
 「魯山人は陶芸の技術については、アマチュアである。
 しかし、偉大なるアマチュアはプロフッショナルを
 凌駕するものである」と。良い言葉だ。

 英国の美術史家ケネス・クラーク氏は
 19世紀にコンスタブルやターナーが現れるまで、
 英国美術は大したものを生み出していないと語っている。
 ただし、建築を除いてと。
 しかし、英国における偉大な住宅建築は、
 みなアマチュアに依るものらしい。

 魯山人は何よりも古陶を手本にしていた。
 桃山時代の美をことさら愛し、意識していた。
 魯山人の斬新さは一重に「温故知新」と言うことだろう。

 林屋氏によれば、魯山人は備前が最も優れていると言う。
 その通りなのかも知れない。
 けれど、焼いて割れてしまった備前焼きや志野焼きを
 接いだり、銀彩などで甦らした魯山人が好きだ。
 
 「できの悪い焼き物ほど可愛い」、そう言っていた。
 「できの悪いオレほど可愛い」よしい。

 



 
 

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