「うらを見せおもてを見せてちるもみじ」良寛
年を重ねるほどに、紅葉が愛おしい。
鬼怒川温泉の屋上露天風呂のもみじ。
東武日光駅ホームのもみじ。
そして、新宿御苑のもみじ。
美しいもみじを眺めていると、魂が抜けるような思いがする。
数年前、一度だけ能を見た。
吉祥寺のお寺での薪能。11月の上旬だったろうか。
野外の特設ステージが薪の炎に囲まれて、
静けさの中に幽玄な雰囲気が醸し出されていた。
演目は「紅葉狩」。
紅葉狩に出掛けた武士が、非常に美しい紅葉に潜む物の怪に
心奪われる。物の怪に扮した役者(シテ)の舞が素晴らしい。
ラストは、物の怪の魔力を振り切って刀で成敗し、めでたしめでたし。
生まれて初めてのお能を堪能した。
美しいものには魔物が潜む。
雪女やお菊さん、雨月物語の姫もみな美しい。
美しい物の怪は美しいもの、特に子どもに取り付こうとする。
世界中のあちこちで、男の子を女装させて育てたり、
化粧したりするのは、物の怪を惑わすためらしい。
わざと汚いつけ身なりをさせたり、日本では名前に丸や子を付けた
(いずれも排泄物を意味した)のも魔物から子を守るためだったと言う。
師走もはや一週間が過ぎた。今年のもみじも見納めだ。
12月9日。強はジョン・レノンの29回目の命日である。
(亡くなった現地ニューヨークでは12月8日)。
生きていれば69歳。
自分が年を取るのも道理である。
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