2009年12月6日日曜日

紅葉狩

「うらを見せおもてを見せてちるもみじ」良寛

 年を重ねるほどに、紅葉が愛おしい。
 鬼怒川温泉の屋上露天風呂のもみじ。
 東武日光駅ホームのもみじ。
 そして、新宿御苑のもみじ。
 美しいもみじを眺めていると、魂が抜けるような思いがする。
 
 数年前、一度だけ能を見た。
 吉祥寺のお寺での薪能。11月の上旬だったろうか。
 野外の特設ステージが薪の炎に囲まれて、
 静けさの中に幽玄な雰囲気が醸し出されていた。

 演目は「紅葉狩」。
 紅葉狩に出掛けた武士が、非常に美しい紅葉に潜む物の怪に
 心奪われる。物の怪に扮した役者(シテ)の舞が素晴らしい。
 ラストは、物の怪の魔力を振り切って刀で成敗し、めでたしめでたし。
 生まれて初めてのお能を堪能した。

 美しいものには魔物が潜む。
 雪女やお菊さん、雨月物語の姫もみな美しい。
 美しい物の怪は美しいもの、特に子どもに取り付こうとする。
 世界中のあちこちで、男の子を女装させて育てたり、
 化粧したりするのは、物の怪を惑わすためらしい。
 わざと汚いつけ身なりをさせたり、日本では名前に丸や子を付けた
 (いずれも排泄物を意味した)のも魔物から子を守るためだったと言う。

 師走もはや一週間が過ぎた。今年のもみじも見納めだ。
 
 12月9日。強はジョン・レノンの29回目の命日である。
 (亡くなった現地ニューヨークでは12月8日)。
 生きていれば69歳。

 自分が年を取るのも道理である。
 
 

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