2009年11月20日金曜日

秋のリズム

 ジャクソン・ポロックはアルコール中毒だった。
 名作「ラベンダーミスト」や「秋のリズム」を
 描いている頃は、禁酒に成功していた頃だ。

 ポロックの伝記映画「ポロック・愛のアトリエ」
 でもそれが描かれていた。
ずっと禁酒を貫いていた彼が、制作風景の撮影のために
 野外で絵を描く。
 慣れない撮影、寒さのためにバーボンに手を伸ばす。
 元のアル中に逆戻りしてしまう。

 自分で制作していて、絵の具が余る時がある。
 余った絵の具でポアリング(撒き散らし)を試みる。
 絵の具の粘性の違い、溶かす水の量や、
 滴らせ方撒き散らし方に依って表情が変わる。

 抽象的な表現は、対象としてのイメージ持たない分、
 表現行為に没頭出来る利点がある。
 しかし、逆に強い意志と作品の全体像を持たないと
 ただの造形遊びに陥ってしまう。

 最初の抽象画家の一人、ピエト・モンドリアンは
 キリスト教の持つ絶対的で厳格な神の世界を 、
 抽象表現で表したと言われている。
 抽象の方が普遍性を表し易いからだ。
 米国の優れた抽象表現主義の画家、マーク・ロスコ、
 バーネット・ニューマンはともにユダヤ人だった。
 知っての通り、ユダヤ教では神の姿を具象的には表さない。

 ピカソが完全抽象の入り口に、歴史上最も早く立ちながら、
 そこへと向かわなかったのは、彼の中にカソリック的な
 多神教的の素地があったからではないだろうか。
 (ピカソ自身は無神論的な態度を表明しているが)

 ポロックは大恐慌の時代の画家だった。
 多くの芸術家が退廃的になり、多くがアル中だったと聞く。
 
 僕は自分がアルコール中毒でないことを確認するために
 週に2,3度お酒を抜く。

 「酔のさめかけの星がでてゐる」放哉

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